A 便乗誘拐
「明日、五千万円を鞄に入れて、お前が一人で京王線に乗り千歳烏山の駅で降りろ。
三時ぴったりに東口の改札を出て、北へ向かって歩け…」
誘拐犯と被害者の家族、その電話でのやり取りを偶然聞いてしまった謙二は、身代金の横取りを計画する。
それは絶対に失敗する事の無い、完全犯罪の筈だった…。
A ジイジお願い
田舎ではあるが気ままな一人暮らし、そんな隠居生活を送る清志の元に、離れて暮らす幼い孫娘から助けを求める電話がかかって来た。
「ジイジお願い、ウチに来て。このままだとパパとママは…」
最愛の孫のピンチに、清志は数年ぶりの東京行きを決意して…。
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B 枷 (かせ)
気がつくと、俺の足は黒い枷と鉄の鎖で繋がれていた。どうやら拉致された様だ。顔も知らない男が穴の入り口で見張りをしている。きっと俺に恨みを持つ奴の仕業に違いない。
自慢じゃないが心当たりは山程ある。乗り越えて来た修羅場の数も数知れずだ。今度だって俺は、口から出まかせ舌先三寸、持ち前の機転で…。
B 杉山さん
夏休み、中学生だった私の生活に杉山さんは突然現れた。何の前触れもなく、この上なく理不尽に、私の人生に割り込んで来た。 母が突然再婚して、杉山さんという名のこのおじさんが私の父親になるという。
「よろしくね」と話しかけて来た杉山さんの手は、爪の端が黒ずんでいた…。
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